オレンジ服のヒーローの一途な愛
現場へはジャスト5分で到着した。
初期消化は失敗しているが、1階に逃げ遅れはなく、2階の美容室は幸い今日が定休日だ。

「3階のエステサロンで要救助者一名。店長が本人に電話をし、店内に残っていることを確認。電話はすぐに切れたそうです」

先着隊からの報告に息をのんだ。
通りに面している壁には、人が通れる大きさではないフィックス窓が2つ。ここからの救出は不可能だ。
建物の横側に引き違い窓はあるようだが、隣の建物との距離が近すぎてそこからの救出も難しいし、このままでは延焼も免れない。
火元を放水しても、火が弱まればその分煙が舞って視界が悪くなる。
もしあおいがサロンの外へ逃げていたら探すのは困難を極める。
急がないと一酸化炭素中毒になる危険性が高い。
酸素呼吸器に防火衣、装備は全部で約20キロ。
要救助者用の簡易呼吸器も用意する。
最悪の事態も想定して動かなければならない。
だけど、平常心を保たなければ。
一番守りたいひとだからこそ、いつもの訓練や培った経験の成果を発揮しなければならない。

「よし、階段から上るぞ。面体着装」
「了解、面体着装」

――待ってろよ。必ず助ける。



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