オレンジ服のヒーローの一途な愛
『……携帯電話のご使用はーー』

どこかから抑揚のない声がぼんやりと聞こえて目が覚めた。
真っ白な天井は、私の部屋のものとは違う気がする。
身体がだるくてうまく動かず、なぜか右手が重い。
右手に視線を向けると、指がクリップのようなもので挟まれている。
それが脇のモニターに繋がっているようだ。
ここは病院……だよね?私、どうして……
記憶を遡って、だんだんと頭の中がクリアになってくる。
そうだ。私、火事に巻き込まれたんだ。

「あおい?」

ハッとして視線を上げると、翔ちゃんが切迫した顔で私を見下ろしていた。

「大丈夫か?どこか痛いところは?」
「うん、平気。痛くないみたい」
「よかった」

翔ちゃんは泣きそうな顔で微笑む。
じわじわと実感がわいてきて、つられて私も泣きそうになる。
私、助かったんだ……

「もしかして、私を運んでくれたの翔ちゃんだった?」
「ああ。呼びかけたら一度目を開けたから一先ずホッとしたよ。あの煙の中、よく頑張ったな」

翔ちゃんの大きな手が頭をなで、気が緩んで堰を切ったように涙が止まらなくなる。

「怖かったよお」
「うん」

機器がついていない左手で翔ちゃんのシャツをギュッと握り、子どもみたいにしゃくりあげて泣いた。
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