オレンジ服のヒーローの一途な愛
しばらくあやすように頭をなでてくれていた翔ちゃんが、静かに口を開く。

「それで、こんな時なんだけど、言わなきゃいけないことがある」

ギクッとして涙が引っ込んだ。
彼女と間違えた件、だよね。
今弱っていてそんなの聞く気分じゃないんだけど……
なんて言う前に、翔ちゃんの両手が私の左手を包み込んだ。

「順番、間違えてごめん。告白もしてないのにあんなことされてショックだったよな」
「……え?順番って?彼女は?」
「彼女?」

翔ちゃんは怪訝な顔をして首を傾げる。

「彼女ってなんの話だよ」
「だから……えっと、彼女と私を間違えたんじゃないの……?」

こわごわ訊ねると、翔ちゃんは私の言葉の意味がわかったようで、眉根を寄せる。

「俺は『順番を』間違えたんだよ。彼女なんかいない。そのくらいわかるだろ」
「えっそんなのわからないよ。だって翔ちゃんにもお兄ちゃんにも聞いたことないし」
「彼女がいたら恋愛映画なんて彼女と観に行くだろ」
「そう言われれば、そうかもしれないけど……」

私の手を握る力が増し、熱い瞳が真っ直ぐに私を見つめる。

「絶対助けなきゃって思った。あんな遺言みたいなの、言わせっぱなしでたまるかって」
「そういえば私、翔ちゃんに何かメッセージ打った気がする」
「朦朧としてて覚えてないか?」
「うん」

翔ちゃんは穏やかに口元を緩めた。

「じゃあ、俺も同じことを伝えようと思ってたから、そのまま返すよ」

翔ちゃんは私の髪を耳にかけ、顔を寄せてやさしく囁く。

「 “ずっと、だいすきだったよ” 」

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