オレンジ服のヒーローの一途な愛
「言わないだろうとは思ったけど。救急車拒否したのもそれが理由だろ」
「だって、お兄ちゃん心臓麻痺とか起こしそうだし」
「まあそれはありうるな。下手すりゃ大樹も救急搬送だ」

大樹(だいき)というのは私の6歳年上の兄で、私と一緒にこのマンションに暮らしている。
翔ちゃんは兄の高校時代からの親友で、今は勤務する消防署の近くの寮に入っている。

翔ちゃんは消防署の特別救助隊の隊員で、人命救助が主要任務だ。
事故や火災現場に行って逃げ遅れた人を救出する、危険な仕事。
朝8時半から24時間の当務と、非番、週休を繰り返す特殊な勤務体制になっている。

「とにかく無事でよかったよ」

大きな手が私の頭にポンと乗っかる。
このひとはわかっているんだろうか。
こんなふうに触れられるたびに、私がドキドキしていることを。

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