きっかけ【短編】
 これ以上、こいつといたら間違いなく
 もっと好きになってしまう。

 それが分かったから。

 あたしは人気の少ない道に入ったとき、思い切ってといかけた。

「あのさ」
「何?」

 わざと嫌なことを言った。

 迷いもあったけど、
 やっぱり傷つきたくないから。

「楽しかった? 
気まぐれで昔振った子を連れまわすのは」

 自分で終わらせようとしたのだ。

 傷つくのに、好きでいるなんてつらいから。

 可能性がゼロになれば
 少なくとも傷つかずにすむ。

「それって」


 彼があたしを見る。

 驚いたように目を見開いて。



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