きっかけ【短編】
「何よ。それ。あんたがあたしのことが嫌いだって言ってたじゃない」

「だから、あれはさ」

 巧の顔が赤くなっているのに気づいた。


「だいたいお前だって悪いんだからな」

「何が?」

「カバンの中にそんなものを急に入れるなよ」

 多分、彼へ書いたラブレターのことだろう。

「だって机の上にでも置いておけとでもいうわけ?」

 巧は眉間にしわを寄せ、顔を背けた。


「落としたんだよ」

「え?」

「帰る準備をしていたら、
手紙を落としてさ、
周りのやつらにからかわれて大変だったんだって」

 ちょっと想像して
 それは正直嫌だと思ってしまった。
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