きっかけ【短編】
「どうして今更告白してこようって思ったのよ」

「だって前田に早くしないと誰かに取られちゃうとつつかれたから」

 前田とは朝子のことだった。

「だからとりあえず、デートにでも誘って、
隙を見てって思ったから」

「それであたしに話しかけてきたの? あんな唐突に」

 巧の顔は真っ赤になっていた。

「悪いかよ」

「バカじゃない」

「バカだよ。ずっと好きでたまらなかったんだから」

 そう言って巧があたしを抱きしめた。

 そんなこと初めてで
 どきどきしていた。

 彼の胸の中でやっと言葉を発する。
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