きっかけ【短編】
 手紙をひっそりあいつのカバンに潜ませておいたのだ。

 で、その日の放課後、あたしの家のチャイムが鳴った。

 立っていたのは巧。

 彼の顔は真っ赤になって、息を乱していた。

「お前のことなんて大嫌いだから」

 そう彼は言ったのだ。

 わざわざ家にまで来る?

 それで嫌いって。


 よほどあたしのことが嫌いなのだ、とわかった。

 だから言ってやったのだ。

 売り言葉に買い言葉じゃないけど。

「こんなの冗談に決まっているでしょう? だまされてばかじゃない?」
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