きっかけ【短編】
第二章 意味不明な行動
 あたしは廊下の向こうから歩いてくる存在を見つけた。

 すらっとしていてとにかく目立つ。

 背丈はほどほどに高く、でもひょろっとはしていない。

「巧」

 朝子はこともあろうにあいつの名前を呼んだ。

 彼女も小学校から同じだが、一部始終を知るわけもない。

 さすがにそんな微妙な話を友達にできるわけもない。


 あいつがこちらを見た。

 あたしは顔を背け、窓の外を眺めていた。


 早くあいつが通り過ぎてくれることを願いながら。

「小春」

 いつも絶対あたしを呼ぶことなんてなかった低い声。



 その言葉に不意に高鳴る。

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