きっかけ【短編】
 好きなんていわなきゃよかったかもしれない。


 意識して、ばかみたい。


「話聞いてる?」


 その言葉に我に返る。


「聞いているよ。もちろん」

 全然聞いてない。でも、そんなことを言えるわけもない。

「じゃ、明日の十二時に」
「十二時?」

「だからデートしようって」


 デート?


 気づけばもうあたしの家の前だった。


「じゃあ、駅前に十二時だから忘れるなよ」


 巧はそう言うと、足早に去っていった。
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