恋神様に願いを込めて
「私、ずっと理想の人に出会うことが夢だったの。…だけど、理想が高すぎるせいで今までそんな人に出会えたことなくて、それでも諦められなくて行った合コンで出会えたのがレンくんだった。レンくんは私の理想そのもので、王子様で、そんなレンくんに好きって言ってもらえてすっごく嬉しかった」



この一週間、本当に夢のようだった。


ずっと憧れていた理想の人と理想のデートをして、ドキドキして、初めて告白されて。



「レンくんと付き合うことで、やっと本当に夢が叶う気がした。…でも、気づいちゃったの。私はずっとレンくんを理想の人とだけしか見ていないことに」



どうしてあの時、告白の返事を即答できなかったのか。


突然のことで驚いただけじゃない。



「私はレンくん(理想の人)よりも、好きな人がいるから。だから、レンくんとは付き合えない」



全然理想とは程遠くて、喧嘩ばっかりで、こいつとだけは絶対に付き合わないと思っていたのに。


なのに、レンくんとデートしてても晃はこうだったなとか晃はこうするとか、晃のことばかり思い浮かんで。


いつだって隣にいたのは晃で、本当は誰よりも優しくて私のことを大切にしてくれて、やっと気づいた想いは“好き”という気持ちだった。



「…そっか、俺は美羽ちゃんにとって理想の人にしかなれなかったんだね」


「レンくんとは全然正反対のやつなんだよ。本当、どこに惹かれたんだろ…」



…ううん、違う。きっとその全部に私はとっくに惹かれていたんだろう。



「好きって気持ちに理想なんて関係ないよ。美羽ちゃんには気づいていなかっただけで、ずっと前から王子様がいた。ただそれだけだよ」
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