恋神様に願いを込めて
家まで送ってくれた先輩に頭を下げてお礼を言う。



「いやこちらこそ。やっぱり行ってよかったよ。紬ちゃんの反応面白かったし、ロイ様のこと話してる時の生き生きしてる紬ちゃん見てるの好きだから、また何かある時は俺も連れて行ってね」


「え、あ、は、はい…」



好き、という言葉に心臓がどきんと飛び跳ねる。


さらりとこういうことを言えちゃう先輩はずるい…。



「じゃあ、また明日ね」



駅に戻る先輩の後ろ姿を見えなくなるまで見送った。


今日は住む世界の違う先輩と、少しだけ近づけた日だった。





「ねえ、桜庭さんちょーっといい?」



昨日が幸せすぎてすっかり忘れていた。


先輩のファンの女子から呼び出されるなんてちょっと想像すればわかることだったのに。



「昨日充希先輩と帰ったの?」


「なんで桜庭さんが?」



女子五人ほどに廊下に呼び出され、その圧迫感に負けて思わず身を縮める。
< 33 / 95 >

この作品をシェア

pagetop