恋神様に願いを込めて
「えっと…はい…」



カフェに行きましたなんて言ったら殺されそうな勢いだ。


どうにかしてこの場をやり過ごさないと…。



「…あのさ、ありえないとは思うけどまさか充希先輩と付き合ってるとかじゃないよね?」


「つ、付き合う…!?そ、そんなことは絶対にないです…!先輩はあくまで推しというか…」


「そう。なら、もっと身の程わきまえてよね。桜庭さんと充希先輩って…独特な組み合わせだもんね」



クスクスと馬鹿にされた笑い方をされ、かっと頬が熱くなる。


…そうだ、何を勘違いしていたんだろう。



私と先輩は住む世界が違う人なんだから、近づいたって意味がない。


それに先輩は“推し”だ。


推しはどんなに手を伸ばしたって届かない存在なんだから、少し一緒にいたくらいで自分が特別なんてそんなことは思わない。



…ちゃんと、わかっている。





放課後もし中庭に先輩がいたらどうしよう、と思っていたが、幸い今日はいなかった。


だけどもしかしたら来る可能性もあるため、水やりをいつもよりも早く終わらせて教室に戻る。



鞄を取って靴箱に行くと、グラウンドの方からわっと歓声が聞こえてきた。


少し気になってフェンス越しに覗いてみると、先輩が制服姿でサッカー部に混ざって試合をやっていた。
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