恋神様に願いを込めて
部活を引退してからかなり経つというのに先輩は全然うまく、さっきから一人でディフェンスを何人もかわしている。


ゴール前まで来た先輩はそのままゴールをするのかと思いきや、反対側にいたチームメイトに素早くパスを出して点が入った。


それからもブザーが鳴るまで先輩の活躍は止まらず、結局十五点差をつけて先輩のチームが勝った。



「何やってるのこれ?えあれ充希先輩?なんで!?」


「元キャプテンと副キャプテンでチーム対決してるんだって!もちろん勝ったのは充希先輩」


「きゃー!かっこいいー!」



女子の歓声がわっと盛り上がり、いつの間にかギャラリーがさっきの三倍ほども増えていて驚く。



「おーい充希!なんでおまえ相変わらずそんなうまいんだよ!息も全然切れてねぇし!」


「充希先輩やっぱかっけぇっす!」


「憧れる…」



先輩は男子部員からもみくちゃにされながら真ん中で無邪気に笑っていた。



…やっぱり先輩は眩しいな。


花に水が必要なように、みんなには先輩が必要なんだ。


成績優秀で教師からの期待も厚くて、スポーツだってなんでもできて優しくて人気者で。



みんなが先輩を求めるのがすごくよくわかる。



「充希先輩、これよかったらどうぞ…!」
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