恋神様に願いを込めて
「え?でもまだ時間…」


「一緒にいてまた誤解されたら先輩に悪いので、私はこれで…」



教室に戻ろうとすると、先輩に腕を掴まれた。



「また?…もしかして、誰かに何か言われたの?」


「あ…えっと、でも大したことないので…」


「何か言われただけ?何もされてない?もしまた何か言われたりされたら俺に言って。ちゃんと俺が守るから」



先輩は優しい。そんなの出会った時からわかっている。


…でも、その優しさが私の胸をえぐるんだ。



「…優しくしないでください」


「え?」


「誰にでもやってるくせに、私のこと好きじゃないくせに、簡単に優しくしないでください…!」



先輩の手を振り解いて走って中庭から逃げ去る。



胸がずきずきと痛かった。


優しくされることがこんなにも苦しいことだなんて、思わなかった。





中庭に行かなくなってから、四日が経った。先輩ともあの日以来会ってもいないし話してもいない。


きっともう、話すことなんてないんだろうな…。
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