恋神様に願いを込めて
男子生徒は舌打ちをすると荒々しく教室を出て行った。



「あなたもうじうじしてて恥ずかしくないの?好きなものは好きってちゃんと言い切りなさいよ」


「え、あ、ごめんなさい…」



女の子はつかつか目の前まで歩いてきたかと思うと、私の頬をむぎゅっと片手で掴んできた。



「そんな弱そうな顔するから、ああいうクズみたいな男に言い負かされるのよ。それとも、あなたの好きってそんなものなの?」


「ほ、ほんなほほなひ!」



そんなことない、と叫ぶが、女の子に頬を掴まれているせいか上手く喋れない。


女の子はふっと小さく笑うと手を離してくれた。



「その、なんだっけ?ロイ様?のこと好きなんでしょ?」


「うん。ロイ様はいつも元気をくれるから…」


「じゃあ“先輩”は?」


「…え?」



先輩のことも、もちろん推しとして好きだ。推しとして…。



「さっきの会話聞いてる感じだと、もしかして特別な感情があるんじゃないのかなって思ったんだけど、気のせいかしら?」


「先輩は私にとってのもう一人の推しというか…」


「ふぅん“推し”ねぇ。まああなたがそう思うならそれでいいんじゃないかしら?あなたにとって先輩が推しのままでいいなら、ね」
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