恋神様に願いを込めて
推しのままで…。



「…最初はただの推しだった。だけど、だんだん独り占めしたい気持ちが出てきて、私だけに笑ってほしい、優しくしてほしいって。そう思うようになった。先輩と釣り合わないことなんてわかってるのに…。住む世界が違う人だってわかってるけど、離れるのはもっと苦しい…。ロイ様にはこんなこと思ったことないのに…」


「…あなたはもう、その気持ちがなんなのかわかってるんじゃないの?ロイ様を思う気持ちとは別の何かだって、気づいてるんじゃないの?」



ずっと考えていた。


先輩のことを推せば推すほど出てくるのは嫉妬や束縛といった醜い気持ちばかり。


釣り合っていなくても、誰がなんと思おうと私の気持ちはもう決まっていた。



「ありがとう、話聞いてくれて…!私、行くね!」


「ふっ、別に私は何も」



教室を出る手前でそうだと振り返る。



「あの、名前…」


「名前?ああ。私はレンよ。じゃあね紬」


「ありがとう、レンちゃん!」



廊下を走りながらふと、私の名前教えたっけ?と不思議に思ったが、今はそんなことよりも先輩に会いに行く方が先だ。


先輩のいるところなら大体予想がつく。…というか、中庭にいなかったら他なんてわからない。



「はあはあ…っ、せんぱ…っ、…充希先輩!」
< 41 / 95 >

この作品をシェア

pagetop