恋神様に願いを込めて
力尽きて中庭の入り口前でずるずると座り込む。


こういう時、運動をしとけばよかったと少し後悔する。



「…紬ちゃん?どうしたのそんなに走って…。てか俺の名前…」


「あの、お話があって…っ、あの…っ」


「ゆっくりでいいよ、落ち着いて」



先輩に優しく背中を撫でられ呼吸が落ち着いてくる。



「私、実は密かに先輩のことも推してたんです」


「え」


「初めて会った日、ロイ様にそっくりな先輩が私のもう一人の推しになって、一緒にカフェなんかにも行ってファンサービスがすごくて…。私の心臓は爆発寸前でした。ずっとドキドキして、でも幸せで。…初めはロイ様を推してる感じと同じだったのに、先輩と話すうちに実は全然ロイ様と似ていないし子どもみたいに無邪気に笑うことを知って、だんだん違う感情が出てくるようになりました」



ロイ様を推している時は、何をするにも一番に応援していた。


たまに熱愛報道とかも出たりして、それでもロイ様が幸せなら私はそれでいいと思っていた。



…でも、先輩は違う。先輩がもし他の女の子と付き合ったらと考えるだけで苦しくて、先輩の隣にいるのは私がいいと思ってしまう。



「独り占めしたくなって、優しくするのも笑いかけるのも全部私だけがいいって思いました。…私は先輩が好きだから。推しなんかじゃ足りない…。釣り合わないってわかってます。それでも、好きって気持ちだけには嘘をつきたくなかったから。私は、充希先輩が好きです」



泣きそうになりながら、それでも精一杯笑って言えた。
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