恋神様に願いを込めて
「恋神様…」



クラスメイトの女子が言っていたのを思い出す。


噂には聞いたことがあるけど、神様とかそういうものは信じていなかったためここには一度も来たことがなかった。



「…本当にあるんだ」



裏の方に回ると、隅っこにひっそりと佇むようにして小さな祠が置いてあった。


ここに恋神様が住んでいるとか言っているけど、本当なのかな…?



「もっと素直になりたい」



気づいたら、そう呟いていた。


神様にお願いしようなんて思ったわけではなくて、心の中にずっとあった願い事が思わずこぼれた感じに近かった。



もっと五十嵐の周りにいるような素直で可愛い女の子だったら。


好きな人に好かれる女の子に、なれたりしたのかな…。



「その願い、叶えてあげる」


「は?」



透き通った女の子の声が聞こえたかと思うと、ざあっと木々が風でざわめき容赦なく顔面に直撃してきて反射的に目を閉じた。


目を開けた時には誰もいなく、幻聴に首を傾げながらもなんだか不気味な旧校舎にいるのが嫌になり、校舎の方に戻る。
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