恋神様に願いを込めて
「…ごめん。本当は、心配して追いかけてきてくれるなんて思ってなかったから驚いたの。でも本当に何もないから、練習中なのに私のためだけに抜けるなんて馬鹿みたいって思って…。早く戻ってほしいのに、来てくれたことが嬉しくて勘違いしそうになる。だから簡単にこんなことしないで」


「…さっきも言ったけど、結芽花ちゃんだから追いかけてきたんだよ。他の子だったらこんなことしない。勘違いしたっていいよ」


「…は!?な、何言って…」


「結芽花ちゃんが好きだよ」



五十嵐がじりじりと近づいてきて、壁まで追い詰められた。



「す、好き…?いや、ありえない…。またいつもみたいにからかって…」


「からかってないし、いつも俺はマジなんだけどなー。まあそう思われても仕方ないよね。俺だって自分で驚いてるもん。結芽花ちゃんは、ツンデレなだけで本当はすごく優しくてちょっとからかうと顔赤くして言い返してくるとことかすごい可愛くて、いつの間にか夢中になってた。女の子なんてみんな同じって前までのクズな俺は思ってたけど、結芽花ちゃんはずっと俺の中で特別だったよ」



五十嵐の顔は真剣で、嘘を言ってないことくらいわかる。


それでも簡単には信じられなかった。



「でも…」


「信じられない?そうだよね、俺は結芽花ちゃんが好きな充希先輩とは違って、誠実でもないしクズな過去ばかり。それでも、少しでもマシな人間になりたくて女の子の連絡先は全部消したし、遊びもやめた。だけどやっぱり今更だよね」



五十嵐が女子との関係を絶っているというのは本当だったんだ…。


私のためにそこまでしてくれていたのに、五十嵐はこういう人だからって決めつけて信じようとしなかった。


五十嵐は最初から噂の私なんて信じないで、普通に接してくれていたのに。そばにいてくれたのに。
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