恋神様に願いを込めて
放課後、早速生徒会室へと向かう。



「え、あれ見ろよ。高二の永野先輩じゃん」


「永野先輩?」


「え、あんた知らないの!?恋愛の神様よ!永野先輩に恋愛の相談をした男子も女子もみんな成就してるんだから!サラサラの長い黒髪が似合う美人で、お父さんが有名な企業の社長さんだとかでお金持ちのお嬢様だし、成績も優秀で先生達から一番期待されているような、そんなすごい人なんだからね!」



一年生のフロアにある生徒会室に向かう途中で、高一から興味津々な視線を向けられて少し居心地の悪さを感じる。



「きっとあんなにすごい人なんだから、彼氏さんもどっかの王子様とかだったりして」


「え!?永野先輩って彼氏いるの!?」


「いるに決まってるでしょ!経験を積んでるからこそあんなに的確なアドバイスができるんだよ。彼氏とかのレベルじゃなくて、婚約者がいるって噂もあるくらいだし…」



好き勝手言う生徒に心情を悟られないようにポーカーフェイスを極めながら、生徒会室にやっと着く。


中に入ると、まだ佐野くんの姿はなくプリントが机の上に山積みにして置いてあるだけだった。


長机に沿って置かれている、六つのパイプ椅子のうちの一つに座る。



「婚約者、か…」



さっき生徒達が噂していたことを思い出す。


恋神様という噂はどんどん大きくなっていき、今では好き勝手散々なことを言われている。
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