恋神様に願いを込めて
そうだ、あとで担任の先生に挨拶に行かないとな。


結局クラスメイトにもやめることを伝えなかった。余計な心配をかけたくなかったから。



佐野くんにも…伝えるつもりはない。


そういえば、佐野くんは好きな人とどうなったんだろう。


いるかすらも憶測でしかないけど、もう会うのは最後だし聞くだけ聞いてみようかな。



佐野くんの好きな人って、誰なんだろう…。



「好きな人が私だったらいいのに…」



思わず漏れ出た言葉に自分で驚く。


何言っているんだろう、私…。違う。そんなこと思っていない。



「あ、先輩。もう来ていたんですね」


「うわあ!?」



突然現れた佐野くんに驚いて思わず大声を上げてしまう。



「あ、さ、佐野くん…。遅かったわね」


「クラスのホームルームが長引いちゃって。てか寒いですね、今日。こんなところじゃなくて中入りますか?」



少し迷ってから、首を横に振る。



「ううん、この場所が好きだから。ここでいいわ」
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