恋神様に願いを込めて
好きだと言ってくれた佐野くんに、「…私、は…佐野くんを仲のいい後輩としか思っていないわ。だから、お付き合いはできない。ごめんなさい」と断った。


佐野くんは悲しそうに「そうですか」と言って微笑んだ。


気まずくなった沈黙を破ったのは佐野くんで、「生徒会の用事があるから一度戻ります」と言って行ってしまった。



私は、誰もいなくなった校舎裏を離れる気も起きず、ずっとこうして座っている。



「恋愛なんてわからない…」



わからなかった。恋する気持ちとか、誰かを想う気持ちとか。何も知らなかった。


…だけど、私はいつの間にか知っていた。


とっくに恋に落ちていた。



「佐野くんが好き…」



漏れ出した想いと共に涙もあふれて止まらなかった。


優しい横顔も、声も笑顔も。私に寄り添ってくれるところも、全部好き。



誰よりも好きだから、苦しかった。


好きな人に嘘しかつけない自分が嫌で苦しくて、どうすればいいかなんてわからなかった。


恋愛なんて知らないままでよかったのに。



「う…っ、ふっ…うう…っ」
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