恋神様に願いを込めて
「何年、何十年、何百年かかったっていい。もう一度先輩と出会って、次こそ一緒に桜を見たい」



思わず一人で真剣に語ってしまい、ふっと笑みがこぼれた。



「なんて、恋神様は女子の願いしか叶えてくれないのに。何言っているんだろう僕…」



久しぶりにこの場所に来たから、なんだか懐かしくてたくさんのことを思い出してしまった。


今日が先輩の命日だからかな…。



「その願い、叶えてあげる」



ばっと振り向くが、そこには桜の木が立っているだけで誰もいない。


透き通った凛とした声…。間違いない。



「ずっと、ここにいたんですね」



先輩は僕の心の中で永遠に生き続けるだろう。


また出会うその日まで。桜の木の下で、僕は待ち続けよう。



ふわっと風が優しく吹きつけてきた。


まるで僕を優しく抱きしめるような、そんな穏やかな風だった。
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