アマノカワ
プロローグ:上流

 
 庭のアネモネが小さく揺れている。

部屋の窓から見えるアネモネだ。

でも、もうすぐこの花も散ってしまうのだと思うと、何故だか何もやる気が起きなくなってしまった。

そのままベッドに伏せると眠ってしまおうかと思ったが、外がうるさすぎて眠れやしない。

 今外では町の人々総出で祭りの準備をしているのだ。

一週間後、隣の町と戦争が起きるらしい。その勝利を神に祈る。

そんな祭りだ。

 この人達は今西暦何年だと思ってやがる。

二千五十八年だぞ。

 そうは言っても現日本は経済も技術も衰退し、町村間での紛争も黙認されている。
 
だから私も今ここにいるのだけれど。

 この部屋は見晴らしが良くて隣町の様子がよく見渡せる。

 だからこうして、川の向こうの景色をよく、見張っている。
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