アマノカワ

 寒い寒い冬の日だった。雪が紅色の花を染み込ませたのは。

 ――「もう、…やめて……」

 周りには傷から飛び出た血と口から出た吐瀉物が一面に広がっていた。髪の毛は何十本と抜け、今も額はさらけ出されている。

 もう何もかもを出し切って、涙も目に残る一粒がきっと最後だ。
最期の抵抗だ。

 そう私の心は語る。

 (なんで、一人で外にでちゃったんだろう、やめておけばよかったのに、なんでだろう)

 無気力に後悔する私は、先刻まで一人で外に出てしまっていた。

あれほどまでに父母に禁止されていた約束を破ってしまった。

 だって…だって…窓から見た君が私に笑いかけてくれたんだ。
気のせいかもしれないけど、ほんの少しかもしれないけど、ただそれだけに夢中になってしまった。

 じっとみていると寒さのせいで凍っていた川を君は渡ろうとするんだ。

それをみているうちにつけられた火はどんどんと大きくなって、やがて抑えられなくなってしまった。

 目の前で見た君は窓越しで見るよりも遥かに暖かくて、氷が溶けてしまわないかと心配になるほどだった。

でもとけてしまったのは止められていた時間の方で。

 あとはひたすら鬼に蹂躙されること以外に何も書くべきことは無かった。
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