アマノカワ

 やけくそに川に石を投げつけるが、生き物もいなくてただ水がはね返る。

 そんなことをしても帰りたい場所も帰れる場所もなくて結局、星が出るまで川岸に居座り続けてしまった。

 そうすると、空に浮かび上がった満天の星空が大きな川にゆらゆらと揺れていることに気がついた。

「いつもはもっと早く帰るから気づかなかった…きれい…」

 そう言って微かに覗かせた微笑みは、健気に佇むコスモスとなんの変わりもなかった。

 雪は未だに降り続け、体温を奪いあげている。

 寒くて眠くなった折に、ふと思い出した。小さな頃の記憶。

 まだ天野町と川野町の仲が良かったとき、夏の暖かい日で、父と母とそれと友達の家族と一緒に天の河をみた。

新月の夜の辺りは真っ暗で、あの時も川に沢山の星空が映っていたのを覚えている。

 たしかこの日はちょっとした事件が起きた。
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