アマノカワ
山奥から星空をみていた私はふとその友達が居ないことに気がついた。
今はもう顔も名前もぼんやりとしか覚えていない。
それでもその時は気の置けない存在で、親子ともによく遊んでいた。
そんな彼は好奇心旺盛だったから、きっとなにかに誘われて、暗い森の中へと入っていったのだろう。
そう思った私は、自身の好奇心にも少し刺激され、酒に酔いしれる大人達を横目に森の中へと入っていった。
森の中は星の光も入ってこなくて、思った以上に暗かった。
かさかさと枯葉を踏む音につれ私の不安は増していき、それが頂点に達したときに体を跳ね上がらせた。
真横ですすり泣く声が聞こえたからだ。
でもそれは怖がる必要なんてなくて、自分よりも怖がっている彼がそこにいるだけだった。
その時の彼は、しめ縄と紙垂に巻かれた小さな岩にもたれかかっていたと思う。
私はそれぞれにそっと抱きついて、彼の不安と自分の怖さを拭うことに使った。
思い出せる記憶はそこで止まっていて、次に見えたのは焦る親達と駆けつけた複数人の警察官だった。
(どうして今さらこんなことを思い出すんだろう)
そう思いながら私は眠気を振り払い川岸を後にしようとする。でもそれはかなわなかった。
いつの間にか、川の向こうから君に見つめられていたから。