アマノカワ
第一章 青波に吹かれて


 青波 響(あおなみ ひびき)。そう呼ばれた俺はただ返事をひらりと返し、中学を卒業した。

 あらかた衰退しきった日本だったが、かろうじて誇りであった教育の水準だけは保っていた。

紛争が起きる度、クラスの空席がぽつぽつと増えてはいったけど。

「クソぉぉぉ!誰とも付き合えずに中学終わってしまったぁぁぁ!春海ちゃんかわぃぃぃぃ!」

 隣で嘆くこのクソぉぉぉ野郎は俺のそこそこ仲のいいクラスメイト、新道 春翔(しんどう はると)だ。

「うるせえよ。そんなんだから付き合えねんだよ。」

「お前も一緒だろうが!」

 桜の散る小さなグラウンドに響く叫び声。

案外日常は平和なのだ。

まあ、その平和もまた一週間後には壊されようというところなのだからいたたまれない。

 そんな不安を抱えて、ただぼーっと遠くの地平線を見ると、どうしてもあの日を、あの人を思い出してしまう。
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