アマノカワ
エピローグ:下流
「おじいちゃん、何読んでるの?」
「これは昔の本だよ。」
「へぇ、どんな本なの?」
「昔昔の神様の話だよ。」
「ふーん、じゃあこれはなあに?」
「これはおじいちゃんの大事なしおりだよ。」
「ほーん、なんで大事なの?」
「大事な人がくれたからだよ。」
「よくわかんないや。私は全然欲しいと思わないもん。」
「みつきにも大事な人が出来たらわかるさ。」
「でもやっぱりまだよくわかんないや。そんな枯れたお花よりお星さまの方がきれいだもん!」
「はいはい、今日は一緒にお星様を見に行く日だったね。」
「わーい!!」
「みてみて!おじいちゃん!あれは天の河って言うんだよ!沢山のお星様でできてて、織姫様と彦星様があう場所なの!」
「みつきは物知りだねえ。どこかで聞いたのかい?」
「ううん!絵本で読んだの!」
「絵本かぁ。それはいいねえ。」
「ところでおじいちゃん、さっきから気になってたんだけど、あの不気味な岩はなあに?」
「あれは神様だよ。」
「岩が神様?」
「ああ、そうだ。良くしておけばみつきも困った時にきっと神様が助けてくれるよ。」
「じゃあ手を合わせないと!」
「そうだね。」
そういうと優しく笑って、岩の前でよく分からない自前のお経のようなものをあげている。
「おじいちゃんも早く!」
「はいはい。」
天の河の光をおじいちゃんの頭が反射し、生暖かい風が二人と岩を包む。
いつの日かあの剣がカエデノミコトとして祀られる日がくるのは、また別のお話し。
渡る道 雪より白く 未知の明く 天の河には 今日も凍えて/青波 響
思い出す 散りばめられた 星空を かき集めてた 記憶の押し花/瑠川 楓