アマノカワ
あれは今日よりも寒い冬の日だった。
朝目覚めるといつもより明らかに寒く、布団から出たくない、そんな嫌な朝だった。
「雪降ってんじゃん…」
窓からみた景色は一面真っ白で、庭の枯れた白いコスモスも色を取り戻していた。
面倒ながらも少しだけ楽しそうだと思ったのでさっさと支度を済ませ、ざくざくと雪を踏み潰しながら学校を目指して歩いていった。
「あれ、」
通学の途中でみたのはいつもと違う光景だった。
もちろん、全体的に町が白いのは当たり前なのだけれど、そうではなくていつも見る目の前の大きな大きな川がカチンコチンに凍っていたのだ。
重要なのは凄さでも綺麗さでも神秘さでもなくて、その川が隣町との境目の川だったことだ。
隣町とは仲が悪く、行き来する橋もかかっていなければ小舟もない。
だからいつもはその大きすぎる川に阻まれて、隣町に行くことはできなかったのだけれど、今日は渡れてしまう。
そんな光景を目前にして俺は母や父や町の人々に裏切り者と罵られる心配など気にする理由もなく、ゆっくりと足を踏み入れた。