アマノカワ
その後、どうやって避難するかを話し合い、防災袋に食料と水をいれて、家へと帰ろうとした、その時だった。
川の向こうに、君がいた。
風に吹かれてたなびく髪はやけに美しく見えて、後ろの夕焼けと降る雪はまるで舞台のスポットライトのようだった。
目を離したくても眼球は言うことを聞かなくて、そのうちこちらを振り向いた君と目が合ってしまった。
無論、君はなんの反応もなく、すぐに元の場所へ目を戻してしまった。
ただ、この剣はやはり余程カッコよくみえたのだろう。
チラリと一度だけこの剣に目を向けたのを俺は知っている。
もう、あたりを紅に染めていた太陽はなくて、水と水が擦れ合う音だけが響いていた。
俺はなんだか寂しくなってしまって、何をしているのかを聞こうとしたけれど、きっと水分を随分と長い間とっていなかったからだろう。
喉が上手く開かなくて、聞くことができなかった。
結局何も話すことなどなくそのまま家に帰り、その剣を家の壁に立てかけると一気に肩の力が抜けた気がして、俺は川底に沈むように眠りについてしまった。