お前の全てを奪いたい【完】
FIRST
環奈との出逢いから二週間程が経った、ある日の事。
俺は出勤前、繁華街で偶然環奈と遭遇する。
「環奈」
「あ、万里さん」
いつもはギリギリに出勤するけど、今日はたまたま近くに用事があって早めに来ていたおかげで環奈に会えた訳で、たまには早く出勤するのも悪くないと密かに思っていた。
だけど、環奈の様子はどこかおかしい。
元気がない事と、右目の少し下あたりから頬にかけて赤く腫れている気がして、俺はそれがどうにも気になった。
「おい、その右頬どうした?」
「え? あ、その、ちょっと転んだ時にぶつけてしまって……」
「ぶつけた?」
「はい……その、やっぱり目立ちますか?」
「まあな。けど、上手く化粧すりゃそこまで目立たねぇとは思う」
「そうですか、それなら良かったです」
先程とは打って変わって、いつも通り笑顔を向ける環奈だけど、その笑顔もどこかぎこちない気がして、俺はますます放っておけなくなる。
「なあ環奈、何かあったんじゃねぇのか?」
「え? そんな事ないですよ? いつも通りです!」
しかし、それに触れられたくないのか、あくまでも環奈は話す気がないようで、俺はそれ以上追求する事が出来なかった。
それから更に数日後、いつもの如く礼さんと共にHEAVENを訪れたけど、この日環奈の姿は店に無かった。
(何だよ、環奈は居ねぇのか……つまらねぇな)
営業時間外だし、用事でもあるなら仕方がないと思ったけど、それとなく環奈についてキャストや明石さんから聞くと、驚くべき話を耳にする。
「カナの身体に、痣があった?」
「そうなの。着替える時ね、偶然見えたんだけど、腕とかお腹とか、殴られたような痣があって、何だか痛々しい感じだったの」
「今日だって急に休んだし、顔でも殴られて隠しようが無かったんじゃない? あの子、DVにでも遭ってたりして」
「えー? 彼氏いるの?」
「さあ? あの子、あまり自分の事話したがらないから知らないけど。あの痣は転んで出来たとかじゃないでしょ」
「確かに」
殴られたような痣があったという話も勿論だけど、環奈に彼氏がいるかもしれない。
その事実が俺の心を酷く騒がせていた。
俺は出勤前、繁華街で偶然環奈と遭遇する。
「環奈」
「あ、万里さん」
いつもはギリギリに出勤するけど、今日はたまたま近くに用事があって早めに来ていたおかげで環奈に会えた訳で、たまには早く出勤するのも悪くないと密かに思っていた。
だけど、環奈の様子はどこかおかしい。
元気がない事と、右目の少し下あたりから頬にかけて赤く腫れている気がして、俺はそれがどうにも気になった。
「おい、その右頬どうした?」
「え? あ、その、ちょっと転んだ時にぶつけてしまって……」
「ぶつけた?」
「はい……その、やっぱり目立ちますか?」
「まあな。けど、上手く化粧すりゃそこまで目立たねぇとは思う」
「そうですか、それなら良かったです」
先程とは打って変わって、いつも通り笑顔を向ける環奈だけど、その笑顔もどこかぎこちない気がして、俺はますます放っておけなくなる。
「なあ環奈、何かあったんじゃねぇのか?」
「え? そんな事ないですよ? いつも通りです!」
しかし、それに触れられたくないのか、あくまでも環奈は話す気がないようで、俺はそれ以上追求する事が出来なかった。
それから更に数日後、いつもの如く礼さんと共にHEAVENを訪れたけど、この日環奈の姿は店に無かった。
(何だよ、環奈は居ねぇのか……つまらねぇな)
営業時間外だし、用事でもあるなら仕方がないと思ったけど、それとなく環奈についてキャストや明石さんから聞くと、驚くべき話を耳にする。
「カナの身体に、痣があった?」
「そうなの。着替える時ね、偶然見えたんだけど、腕とかお腹とか、殴られたような痣があって、何だか痛々しい感じだったの」
「今日だって急に休んだし、顔でも殴られて隠しようが無かったんじゃない? あの子、DVにでも遭ってたりして」
「えー? 彼氏いるの?」
「さあ? あの子、あまり自分の事話したがらないから知らないけど。あの痣は転んで出来たとかじゃないでしょ」
「確かに」
殴られたような痣があったという話も勿論だけど、環奈に彼氏がいるかもしれない。
その事実が俺の心を酷く騒がせていた。