お前の全てを奪いたい【完】
「……ば……んり……さん?」
「……環奈、今日店に来てたアイツ、お前の彼氏なんだろ?」
「!!」
「今日、俺が休憩してた時、近くのスタジオで練習でもしてたんだか知らねぇけど、偶然アイツが連れと話してるの、聞いたんだ。彼女がHEAVENで働いてるって。それを聞いた時はまだ環奈の事かどうかまでは分からなかったけど、店に行って確信した。アイツがお前の男だって」
「…………そう、だったんですね」
「その痣っていうのは、アイツに殴られて出来たモンなんじゃねぇのか?」
「違っ……」
「だったら! 俺の目を見て答えろよ!」
「…………っ」
恐らく無意識なんだろう。
環奈は嘘を付くと視線が泳ぐ。
「もう一度聞く。アイツに、殴られるのか?」
「…………」
今度は顔を俯けたまま、静かに頷いた環奈。
分かってはいたが、環奈から改めてその事実を知るとアイツに対して怒りしかない。
「クソっ! 俺がぶん殴ってやる!」
「止めて! 違うの、私が、私が悪いの! 私が……彼の言う通りに出来ないから……だから……」
「お前……何言って……」
俺が怒りを露わにすると環奈が止めてきた事に驚きはしたが、アイツを庇う発言には理解が追いつかない。
「お前、何でそんな事言うんだよ? どう考えても殴る方が悪いに決まってんだろ!?」
「…………っ痛」
環奈の事が大切なのに、アイツを庇うから苛立ち、つい彼女の腕を掴んでいた手に力がこもってしまう。
「――悪ぃ……」
力任せなんて、これじゃ、あのクソ野郎と何も変わらない。
痛さと恐怖から怯える環奈を目の当たりにした俺は自身の行動を悔いて謝り、彼女から少し距離を取った。
「……あの、私の方こそ、ごめんなさい……」
環奈のその謝罪は、何についてなんだろうか。
俺に、何が出来るんだろう。
クソ野郎から環奈を引き離す事は容易いけど、環奈自身がそれを望まないのであれば、そんな事は出来ない。
そんな時、環奈のスマホから着信音が鳴り響く。
「…………」
「……出ないのか?」
「えっと……その……」
バツの悪そうな環奈の表情から、電話の主があの男からだと悟る。
「……環奈、今日店に来てたアイツ、お前の彼氏なんだろ?」
「!!」
「今日、俺が休憩してた時、近くのスタジオで練習でもしてたんだか知らねぇけど、偶然アイツが連れと話してるの、聞いたんだ。彼女がHEAVENで働いてるって。それを聞いた時はまだ環奈の事かどうかまでは分からなかったけど、店に行って確信した。アイツがお前の男だって」
「…………そう、だったんですね」
「その痣っていうのは、アイツに殴られて出来たモンなんじゃねぇのか?」
「違っ……」
「だったら! 俺の目を見て答えろよ!」
「…………っ」
恐らく無意識なんだろう。
環奈は嘘を付くと視線が泳ぐ。
「もう一度聞く。アイツに、殴られるのか?」
「…………」
今度は顔を俯けたまま、静かに頷いた環奈。
分かってはいたが、環奈から改めてその事実を知るとアイツに対して怒りしかない。
「クソっ! 俺がぶん殴ってやる!」
「止めて! 違うの、私が、私が悪いの! 私が……彼の言う通りに出来ないから……だから……」
「お前……何言って……」
俺が怒りを露わにすると環奈が止めてきた事に驚きはしたが、アイツを庇う発言には理解が追いつかない。
「お前、何でそんな事言うんだよ? どう考えても殴る方が悪いに決まってんだろ!?」
「…………っ痛」
環奈の事が大切なのに、アイツを庇うから苛立ち、つい彼女の腕を掴んでいた手に力がこもってしまう。
「――悪ぃ……」
力任せなんて、これじゃ、あのクソ野郎と何も変わらない。
痛さと恐怖から怯える環奈を目の当たりにした俺は自身の行動を悔いて謝り、彼女から少し距離を取った。
「……あの、私の方こそ、ごめんなさい……」
環奈のその謝罪は、何についてなんだろうか。
俺に、何が出来るんだろう。
クソ野郎から環奈を引き離す事は容易いけど、環奈自身がそれを望まないのであれば、そんな事は出来ない。
そんな時、環奈のスマホから着信音が鳴り響く。
「…………」
「……出ないのか?」
「えっと……その……」
バツの悪そうな環奈の表情から、電話の主があの男からだと悟る。