お前の全てを奪いたい【完】
それは俺が休憩をしていた時、またしても、すぐ側のスタジオで練習していたらしい環奈の男が同じタイミングで休憩していて、誰かと電話をしているらしく興味本意から盗み聞きをした。
すると、
「ああ、この前は水木に売ったぜ。あ? いいんだよ。俺の女をどうしようが俺の勝手だろ? つーかアイツは俺が裏で手引きしてるなんて夢にも思ってねぇから平気だよ。大体襲われるにしても、キャバやって男に媚び売ってんのが悪いんだよ。自業自得。って訳で、お前もどうよ? 2でいいぜ? あ、勿論ゴム有りな」
正直、耳を疑う話を聞いた俺は言葉を失った。
(この話って、環奈の事……だよな?)
話の内容からして、恐らくこの前環奈がホテルに連れ込まれた時の話をしているのだと確信する。
(有り得ねぇ……コイツ、自分の女を知り合いに売ってんのかよ? 信じらんねぇ……)
今すぐ男の前に出て殴り倒してやりたいけど、勤務中だし店のすぐ近くでそんな騒ぎを起こす訳にはいかない。
怒りを必死に抑え込んだ俺はまだ続く話を聞き続け、勤務終わりにHEAVENへと向かった。
「――って言うわけなんだ。俺がこの耳で聞いた話だ。間違いねぇよ」
HEAVENに着いた俺は明石さんに事の顛末を説明し、明日の夜に再び環奈が狙われる事を告げた。
「その男は環奈の彼氏なんだろ? 信じられねぇな、自分の女をそんな風に扱うなんて」
「アイツはクズなんだよ。どこまで環奈を苦しめれば気が済むんだか……」
「この事は環奈にも伝えるのか?」
「いや、アイツは嘘が下手だから知ったら相手を泳がせられねぇだろ。環奈に危険が及ばないよう俺が見張るから、知らせずにいこう」
「……まあ、万里がそう言うなら、それでいくか。しかし、環奈はこの前の事で暫くアフターは断りそうだけどなぁ」
「その辺は恐らく、彼氏が断るなとか言うんだろ。環奈はアイツに逆らえないから……」
「そうか。それじゃあまあ、万里の作戦でいくとするか。……ところで万里、お前、環奈に惚れてるのか?」
「……まあ、否定はしねぇよ。つーか、初めてなんだよ、こういうの」
「だろうな。お前の浮いた話なんて聞いた事ねぇからな。そうか、まあ案外お前には環奈みたいな控え目な女が合うかもな。お前の客って大半が自己顕示欲の塊みたいなのが多いって聞くし」
「確かに」
「明日は何時頃ここに来るんだ?」
「そうだな、環奈の仕事終わりに合わせて、見つからない場所で監視する」
「分かった。明日、頼むぞ」
「ああ」
明日、クズ野郎の企てによって行われようとしている環奈の危機を救う為、明石さんと共に段取りをした俺は、今日も客として環奈を指名し、彼女に気づかれる事無くいつも通りの時間を過ごしていった。
すると、
「ああ、この前は水木に売ったぜ。あ? いいんだよ。俺の女をどうしようが俺の勝手だろ? つーかアイツは俺が裏で手引きしてるなんて夢にも思ってねぇから平気だよ。大体襲われるにしても、キャバやって男に媚び売ってんのが悪いんだよ。自業自得。って訳で、お前もどうよ? 2でいいぜ? あ、勿論ゴム有りな」
正直、耳を疑う話を聞いた俺は言葉を失った。
(この話って、環奈の事……だよな?)
話の内容からして、恐らくこの前環奈がホテルに連れ込まれた時の話をしているのだと確信する。
(有り得ねぇ……コイツ、自分の女を知り合いに売ってんのかよ? 信じらんねぇ……)
今すぐ男の前に出て殴り倒してやりたいけど、勤務中だし店のすぐ近くでそんな騒ぎを起こす訳にはいかない。
怒りを必死に抑え込んだ俺はまだ続く話を聞き続け、勤務終わりにHEAVENへと向かった。
「――って言うわけなんだ。俺がこの耳で聞いた話だ。間違いねぇよ」
HEAVENに着いた俺は明石さんに事の顛末を説明し、明日の夜に再び環奈が狙われる事を告げた。
「その男は環奈の彼氏なんだろ? 信じられねぇな、自分の女をそんな風に扱うなんて」
「アイツはクズなんだよ。どこまで環奈を苦しめれば気が済むんだか……」
「この事は環奈にも伝えるのか?」
「いや、アイツは嘘が下手だから知ったら相手を泳がせられねぇだろ。環奈に危険が及ばないよう俺が見張るから、知らせずにいこう」
「……まあ、万里がそう言うなら、それでいくか。しかし、環奈はこの前の事で暫くアフターは断りそうだけどなぁ」
「その辺は恐らく、彼氏が断るなとか言うんだろ。環奈はアイツに逆らえないから……」
「そうか。それじゃあまあ、万里の作戦でいくとするか。……ところで万里、お前、環奈に惚れてるのか?」
「……まあ、否定はしねぇよ。つーか、初めてなんだよ、こういうの」
「だろうな。お前の浮いた話なんて聞いた事ねぇからな。そうか、まあ案外お前には環奈みたいな控え目な女が合うかもな。お前の客って大半が自己顕示欲の塊みたいなのが多いって聞くし」
「確かに」
「明日は何時頃ここに来るんだ?」
「そうだな、環奈の仕事終わりに合わせて、見つからない場所で監視する」
「分かった。明日、頼むぞ」
「ああ」
明日、クズ野郎の企てによって行われようとしている環奈の危機を救う為、明石さんと共に段取りをした俺は、今日も客として環奈を指名し、彼女に気づかれる事無くいつも通りの時間を過ごしていった。