お前の全てを奪いたい【完】
「……ぁ、んッ……ばんり、さん……だめ……」

 俺が身体に吸い付き、新たな赤い印をつけるたびに反応する環奈。

 アイツのキスマークも、殴られて出来た痣も、全て俺の印に書き換えていく。

 されるがままの環奈は既に息が上がり、熱っぽい瞳で俺を見つめてくる。

「その顔、そそるな――」
「んッ……」

 全てが愛おしくて、正直、めちゃくちゃにしたくなる。

 環奈と一つになりたい。

 奥まで深く、繋がりたい。

 俺にだけ、溺れて欲しい。

 だけど、無理強いはしたくない。

 ここまできて辛いけど、環奈が嫌がるなら止めようと思っていた。

「……環奈、俺はお前を抱きたい。アイツから、全てを奪いたい。それくらい、好きなんだ。……けど、嫌なら止める。俺は、お前が嫌だと思う事は、したくねぇんだ」

 一度深く口付けをした後、俺は環奈に問い掛けた。

「……っ……」

 乱れた息を整え、悩んでいるのか環奈は俺から視線を外し、

「…………私、万里さんにそこまで想って貰える程の女じゃ、ないです…………殴られても、酷い事されても、彼を憎む事も、嫌いになる事も出来ない……馬鹿な女なんです……だから、私……」

 自虐ともとれる言葉を口にする。

「そんな事ねぇよ。俺にとって環奈は誰よりも魅力的だ。俺は初めてなんだよ。女をここまで愛おしいと思ったのは。後にも先にも、環奈だけ。お前以外、愛せないよ」
「……でも、私は……」
「それ以上、自分を悪く言うな。あんな男の事は、俺が忘れさせてやる。俺だけを見て、感じて欲しい。俺に、全てを委ねてくれよ、環奈」

 頭を撫でて軽くキスをすると、迷っていた環奈は、

「………………忘れさせて、ください。私を、万里さんで……満たして」

 手を伸ばして、俺を求めてくる。

 この手に触れたら最後。

 もう、止められない。

「――ッんん!」

 環奈の手を取り、その細くて長い指に自分の指を絡めると、俺は彼女の唇を強引に奪う。

「……っはぁ……ッん……」

 そして、何度も角度を変え、息継ぎが出来ないくらい、貪るようなキスをする。
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