お前の全てを奪いたい【完】
 環奈に惚れてから、ずっとこうしたかった。

「……ッあ……、はぁ……ッん……」
「……気持ちいい……?」
「……ん……っ」

 触れたくて、俺に溺れさせたくて仕方無かった。

「……ばんり、さん…………ッすき……」

 彼女の仕草も、声も、全てが愛おしい。

「――俺も、環奈が好きだ。誰にも、渡さねぇ」

 女を抱いて、こんなにも余裕が無くなるのは初めての経験だった。

「……ッ、ばんりさ……、そんなとこ……だめっ」
「駄目? イイの、間違いだろ?」
「ッんん――」

 身体の隅から隅まで沢山口付けをしていき、恥ずかしがる環奈の全てを暴いていき、そして、

「……そろそろ、いいか?」
「……ん…………来て、万里……さん……」

 俺を受け入れてくれた環奈に再びキスを落としながら、

「――ッ」

 二人の想いは重なり合い、深く繋がり合って幸せな気持ちに包まれながら――共に果てた。


「……ん……」

 そのまま眠ってしまった環奈を腕の中に抱きながら、俺は明石さんにメッセージを入れていた。

 流石にこれから店には行けないから、明日の朝に行く事を告げてスマホを置く。

 ぐっすりと眠っている環奈の寝顔を見ながら、俺は一人幸せに浸っていた。

 人を好きになる事が、こんなにも幸せで心が満たされる事なんだと知り、胸が熱くなる。

 そして、それと同時にある事を思い浮かべた。

 それは、これまで幾度となく身体を重ね合わせてきた人たちの事。

 あくまでも俺は金の為でしか無かったけど、相手からすれば俺に恋愛感情を抱いていて、抱かれてる間は幸せを感じてたのかと思うと、何とも言えない複雑な心境だった。

(もう金輪際、金を積まれても女を抱くのは辞めよう。環奈以外の女は抱けねぇし……抱きたくねぇからな)

 そして、今後いくら金を積まれたとしても、例え指名を取れなくなったとしても、環奈以外の女を抱かないと心に決めた。
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