お前の全てを奪いたい【完】
 正直、ここまで来ると、キスだけでは足りなくなる。

 妊娠中、してはいけない訳じゃねぇとは言われてるけど、環奈と子供に何かがあったらと考えると俺の性欲くらい、いくらでも我慢は出来た。

 いやまあ、こっそり一人で抜く事は多々あるが。

 それでも、今日ばかりはもう止められなくなりつつあった。

 そしてそれは環奈も同じだったようで、

「……ばんり、さん…………、したい……です」

 瞳を潤ませながら切ない表情と声でそんな事を言われてしまうと、俺の理性はもう、消えてなくなってしまう。

「けど……辛く、ならねぇか?」
「大丈夫、つらくならないように、しますから……」
「分かった。俺も極力環奈に負担がかからねぇようにするから、一緒に気持ちよくなろう、な?」
「……はい」

 そして、再びキスをして気持ちを昂らせた俺たち。

 ベッドから降り、壁に手を付いた環奈。

 後ろからの体勢の方が楽だというので、環奈の負担にならないよう気遣いながら、彼女の性感帯を攻めていく。

「……ッぁ、ん……はぁ、……っ」

 息が上がって嬌声が大きくなり、俺のモノを環奈の秘部をなぞるようにあてがうと、そこから蜜が溢れ出す。

 それは、俺を受け入れてくれる準備が整った合図。

「環奈、そろそろいいか?」
「……っは、い……ッ」
「ゆっくり、するから――」
「――ッッ!!」

 挿れたのは久しぶりだったからか、挿入した瞬間、環奈の身体が痙攣したのが分かる。

 それに持っていかれるように、俺も一気に果てそうになるけど、まだ少しだけ足りない。

「――悪い、もう少しだけ、動かすな」
「っん……、っぁ、はぁ……っ」

 イッたばかりの環奈は小さく頷くも、身体の力が入らなくて辛いのと、再び与えられる快楽に、崩れ落ちそうになるのを必死に耐えているように見える。

 それを俺が支えつつ、環奈の中で大きくなる自身のモノをゆっくり動かし、

「――ッかんな……」
「っばんり、さんッ」

 俺たちは共に、絶頂を迎える事が出来た。

 行為の後、ベッドに入り、もう明るくなり始めている空を眺めながら、眠そうに目を擦った環奈は、

「……万里さん」
「ん?」
「あの、確か今日って、お仕事お休みですよね?」
「ああ」
「あの、夜、どうしても行きたい所があるんですけど……いいですか?」
「行きたいところ?」
「はい」
「いいぜ? で、どこに行きたいんだ?」
「……あの、覚えてますか? 二人で、夜空を見た、海岸の事……」
「ん? ああ、勿論」
「私、どうしてもそこへ行きたいんです……駄目ですか?」

 普段、環奈がこうして何かを頼む事など滅多にない。

 だから俺はどうしてか気になったけど、行けば理由が分かるだろうと思い、

「分かった。それじゃあ夕方にでも家を出よう」

 そう言いながら環奈の頭を優しく撫でた俺は、行きたいという理由は聞かず、望みを叶える事にした。
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