Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
――……茉莉花。
ぎゃああああっ無理無理! 声エロ過ぎ、クロードさんっ!
「……何してるんだ?」
テキストをカオに押し付けて無言で悶える私を、不思議そうな眼差しが見下ろしてくる。
「っすみません、なんでも、ないですっ」
あわあわと姿勢を正し、手と首とを振りまくる私。
懸命に平静を装おうとしてるのに……かなり距離が近いため、ボディーソープの爽やかな匂いとか(私も同じ匂いにきまってるのだけど)温まった体温とかモロに感じちゃうし、シルクのパジャマの襟ぐりから覗く首筋から胸元にかけての色気満載パーツは視界に入っちゃうしで、心臓への負荷がすごい。
とても平常運転なんか無理!
だいたい、ソファは10人でも余裕で座れそうなくらい十分なスペースがあるのに、どうしてゼロ距離なの??
私の理性を試したいの?? 嫌がらせ??
それとも、まさかわざと?
誘われてるのかしら?
……って、んなわけないか。
はいはい、すみません。
わかってます。あんな大人のキスしちゃって、私が彼の存在をこれまで以上に近く感じてるだけってことは。
つまるところ、私の意識しすぎ。
最近彼からよく見られてる気がするのだって、まぁただの錯覚でしょう。
実際、彼はキスの件も含めて、あの日のことはあれから何もツッコんでこないし、私たちは相変わらずそれ以上の関係には進んでないもの。