Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
――お父さん……お父さんっ……ごめんなさいぃっ、お父さっ……ぁあああっっ……!
事件から15年、あそこまで自分の胸の内を素直にさらけ出して号泣したのは初めて。事件直後ですら、パニックからの過呼吸はよく起こしていたけど、泣いた記憶はあまりないのに。
――辛い時は泣いていい。
――俺の前では無理するな。
彼のおかげだ。
そのままの私を、全部受け止めてくれた彼のおかげ。
あのキスは、そのためのキス。
私の激情を引き出して癒し、安心を与えるためのキス。
その先を、ベッドでの情事を、予感させるようなものではなく……
ただ、愛情がなければあんなキスはできないと思う。
だからそれだけで満足すべきなんだ。
彼はちゃんと、私を愛してくれているって。
……そう必死に言い聞かせてはいるものの。
実の所、日に日にセックスレスが辛くなってるのも確か。
経験ゼロのくせに、ううん、経験がないからこそ、なのか、ふとした瞬間に淫らな想像が止まらなくて。
形のいいセクシーな唇が視界に入っただけで、筋肉質な腕に触れただけで、彼とのセックスを連想してしまう。
夜は特にツライ。
何しろ大好きな人に抱きしめられて寝なくちゃならないんだから。
悪夢は見なくなったけど、別の意味で眠れない。
かすかなシーツの擦れる音すら煽情的に聞こえてしまい、もう末期症状。
こんなはしたない自分が恥ずかしくてたまらない。
はぁ、こんな煩悩まみれの私をどうかお救いください、神様。
そういう場合、外に相手を作ったりする人もいるらしいけど……私は好きでもない人に抱かれるのは絶対嫌。
それならやっぱり、今のまま我慢するしかないのよね。
こっちからみっともなく誘って、あげく呆れられたり嫌われることだけは避けたいから。
この気持ちを封印して、気取られないよう我慢するしかないんだ。
何があっても。