Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
そうだ、私の誕生日!!
「ウソだろ、本当に忘れてたのか」
「はい、本当に忘れてました……」
ぽりぽり頭をかいて苦笑いする私に、クロードさんは「天然だな」って大ウケ。
膝を叩いて爆笑されてしまった。
でも嬉しい。
誕生日覚えててくれたなんて!
ほらね? 大事なのはこういうことなのよ。
心と心が繋がってるかどうか。
「ということで、日曜日は空けておいてくれよ」
しばらくしてようやく笑いの発作が収まったのか、まだ口元を引きつらせながらもクロードさんはテキストを開いた。
「どこかに連れて行ってくださるんですか?」
「それは内緒。茉莉花はただ時間を空けてくれるだけでいい。さ、リスニングだ。耳に集中しろ」
その話題はそこまでらしい。
えー、日曜日のことが気になってそれどころじゃ、、とぼやいていたのに……
「In the first years of a child’s life many important milestones are reached. By the end of the…………」
低いのに聞き取りやすい、まるで熟練のナレーターみたいな美声がリビングに響くと、瞬く間にそちらへ気持ちが奪われていった。
◇◇◇◇
そして、あっという間に日曜日がやってきた。
ランチを自宅でとった後、クロードさんの車で私たちがやってきたのは有楽町のハイセンスな街角にそびえるギャリオンホテルだった。
五つ星ホテルのさすがのゴージャスさに息を呑んでいる間に、車は正面玄関に停まる。
すかさずホテルのスタッフらしき人が恭しくドアを開けてくれ、車から降り立った、のだけど。
その頃には、彼に言われるままごくごくカジュアルな服装で来てしまったことを思いっきり後悔していた。