Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
1. 新婚妻になりました。
それから、あっという間に4か月が過ぎ――季節は夏から秋、初冬へと移り変わった。
「それでは、宮原茉莉花の結婚を祝して、カンパーイっっ!!」
11月下旬の夜、汐留にあるカジュアルなメキシカンバルで私は幼馴染の友人2人――藤堂香、佐久間知依と乾杯していた。
「ほんとにおめでとう、茉莉花」
「おめでとう!」
「ありがと、香ちゃん知依ちゃん」
「これは、あたしと知依からのお祝い。ペアグラスだよ」
ベリーショートの小顔美女から差し出された綺麗な袋を、「ありがとう、大切に使わせてもらうね」と、ちょっと照れ臭い思いで受け取った。
「まさか茉莉花が一番先に結婚するとはねぇ」
しみじみ言う香ちゃんに「自分でもびっくりだよ」と苦笑いを向けると、「でも」とテーブルの向こう側から反論の声が飛ぶ。
「小学校の時のアンケートにも挙がってたよね、茉莉花ちゃんの名前。お嫁さんにしたい女子ランキング。よく気が付くし、世話好きだしさ。わたしも茉莉花ちゃんの名前書いたもん。茉莉花ちゃんの良さをわかってくれる人が現れるのは当然だよー」
ニコニコ笑って、おっとりと話す知依ちゃん。
思わず「天使がいる~」って、うるうるしながら拝んでしまった。
ミディアムヘアを緩くハーフアップにした、お嬢様然としたスタイルが良く似合う彼女は、外見も天使みたいに可愛らしい。
一方ファッションも含めてボーイッシュでクールな魅力全開の香ちゃんは、「あーはいはい、覚えてるよ、そのアンケート」とがっくり。
「知依は“彼女にしたい女子ナンバー1”で、あたしは“友達になりたい女子ナンバー1”だったんだよね。“友達”って何さ、めっちゃ微妙じゃん?」
(ちなみに、私は“お嫁さんにしたい女子ナンバー1”ではない。5位にギリギリランクインしただけ)
「まぁまぁ、男子からも女子からも人気だった、ってことで」
「そうだよー。頼りになる姉御肌ってこと」
「だからそれが微妙なんだってー。ま、いいけどさ。ところで茉莉花、旦那さんってアメリカ人なんだっけ? 苗字は宮原のままなの?」
すぐに私は「うん」と頷く。
「今って国際結婚は夫婦別姓が多いんだって。手続きすれば同じにもできるけど面倒だし、そこまでしなくてもいいよねって。だからそのままなの」
「へぇえ、そうなんだ」