Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

悩んだ末、購入したのはティアドロップ型の可愛いイヤリング。

「それだけでいいのか」とか「一緒にペンダントと指輪、ブレスレットも買おう」とか、恐ろしいことを言われたのだけど、それは断固阻止。

何か言いたげだった彼は、代わりにお揃いのデザインのカフスを自分用に買うことで満足することにしたみたい。

ちょうどどちらも在庫があったので、そのままつけて行くことにして、ほくほく顔のスタッフさんに見送られて店を後にした。


◇◇◇◇

再びクロードさんの車で移動すること30分。
私たちは都内だというのが信じられないくらい豊かな木々に囲まれた、一軒家レストランへ到着した。

人気のお店らしくざわざわと賑わうゲストの気配がする中、マネージャーらしきスタッフ直々に、奥の個室へ通される。

邸宅の大正レトロな外観とは裏腹に、そこはスタイリッシュなインテリアでまとめられたモダンな一室。
大きな窓からはライトアップされた日本庭園も望め、思わず感嘆の声を漏らしてしまうほど素敵な所だった。


「25歳の誕生日おめでとう茉莉花」

「ありがとう、ございます……でもあの、どうしてこんなにしてくださるんですか?」

オーダーを終え、スパークリングワインで乾杯――彼だけノンアルコールワインなのが申し訳ないけれど――してから、私は思い切って切り出した。

「気に入らなかったか?」

眉をひそめて聞かれ、慌ててそうじゃないと否定する。

「ただ、ここまでしていただくと、何も返せない自分が申し訳なくて」

ピカピカのカトラリーへ視線をうろつかせて言う私の耳に、「なんだ、そんなことか」と笑い交じりの声が届く。

「そんなことって……」

「余計なことは考えなくていい。俺のプレゼントで茉莉花が笑ってくれたら、それだけで俺は嬉しい」


――茉莉ちゃん。
――君が笑ってくれたら、僕も嬉しいよ。


< 142 / 402 >

この作品をシェア

pagetop