Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「ん? どうした?」
「え、あ、いえあのっ……何でも、ないです」
「そう?」
すごい偶然。
今の、ちょっと似てなかった? 学くんの台詞に。
飛び跳ねた心臓を密かに押さえる私をよそに、向かい側で品よくグラスを傾けたクロードさんが「それに」と続ける。
「今日は君の誕生日だというだけじゃない。君のご両親が、父親と母親になった記念日でもある。3人分のお祝いだ。安いくらいだろう?」
「え……」
そんなことまで考えていてくれたの?
「ご両親が慈しんで育ててくれたからこそ、俺は茉莉花に会えたし、結婚できた。お二人には、感謝してもし足りない」
ふわりと優しく微笑まれて、胸がいっぱいになる。
テーブルが間になかったら、抱きついていただろう。
「クロードさん……っ」
初対面の時は、氷のような美貌だと思った。
冷たそうな人だなって。
どうしてそんなこと考えたのかな。
こんなにも柔らかく笑える人なのに。
「茉莉花、俺と結婚してくれてありがとう」
「っ……」
あぁもうずるい。
私ばっかりキュンキュンさせられて……うぅ、泣きそう。
「ほら、食事が来たぞ?」
揶揄うような声で顔を上げれば、ほんとだ、スタッフが入ってくる。
滲みかけていた涙を手早く払った私は、ギュッと口角を持ち上げた。
「嬉しいです。もうお腹ぺこぺこ」
「それはよかった」
大丈夫です。
我慢します。
セックスレス夫婦でも、耐えてみせます!
だってあなたが好きだから。
ずっとずっと、傍にいたいから。
ずっとずっと、あなたの妻でいたいから――