Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
今日のパーティーは、リーズニッポンという総合商社が主催する関連企業同士の懇親会。
毎年恒例の会、と言いつつ今回はいつもより参加者が爆増しているという。その理由は、特別ゲストが来場するから。
それが、フレデリック・リー氏。
リーズニッポンの母体であるリーズグループ(シンガポールを拠点に、様々な分野の一流企業を傘下に収めるワールドワイドな巨大組織。シェルリーズホテルも傘下だ)のトップオブトップである会長さん(内部では総帥と呼ぶらしい)が来日して参加するとあって、この機会にみんな彼とお近づきになる気満々だとか。最初に香ちゃんが教えてくれた。
<シャンパンをいただこうか>
<畏まりました>
<私はジンジャーエールを>
<少々お待ちくださいませ>
<メイクを直したいんだけど>
<それでしたら、あちらにパウダールームが――>
そんなこんなでビュッフェテーブルの準備が終わった私たちは、休む暇もなくドリンクやフードの提供係に。
合間にはホテル内の案内もしたりして、もうバタバタ。
でも、外国語に耳を傾けるのは嫌いじゃないし、忙しくしてた方が気が紛れるし、今の私にはうってつけのバイトかもしれない。
ゲストは続々と来場して、ホール内は大分賑わってきた。
もう200人近く来てるだろう。
ビジネス関係の集まりだっていうから、男性メインのお堅い会になるのかと思いきや、意外と女性もいるみたい。
色とりどりのドレスやジュエリー(間違いなくハイブランドもの)が目を引く会場は、まるでゴージャスなお花畑のようだ。
「あ、ほらあそこでお客を迎えてるのがパーティーの主催者、リーズニッポンの最上悦子社長とその夫」
「へぇ、女性社長なの? すごいね」
「ご主人も確か貿易会社を経営してたはずよ。究極のパワーカップル、ってやつ。あ、今入ってきた男性は、霧島建設の霧島志郎社長」
「隣にいる和服の女性って奥さん? なんかどこかで見たことあるような……」
「そりゃそうよ、女優の花坂雫だもん」
「え、彼女結婚してたの? 知らなかった!」