Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
一体何を考えてるの?
掴んだ、と思った瞬間に泡沫のように消えてしまう。
彼の気持ちを知りたくて、縋るようにその顔を見上げるも――
「茉莉花、……」
怒りを抑えるように、だろうか。
それとも私の視線を避けるように、だろうか。
彼は微かな舌打ちと共に顔を逸らしてしまう。
「クロード!」
そこへ澄んだ声が響き、ビクッと全身が戦慄いた。
視線を巡らせれば、いつの間にかあのご令嬢――高橋雪代さん――が数メートル先に立っている。
今の声は……彼女、だよね?
「何かトラブル? 総帥があなたのこと呼んでらっしゃるけど」
「っあぁ、…………わかった」
素早く交わされる意味深な視線。
そこには他人が入り込めない親密な空気があり、瞬く間に黒い嫉妬が胸の内へ広がっていく。
それ以上見ていられなくて、私はとっさにその場から逃げ出してしまった。
「茉莉花!」
後ろから聞こえた声は無視。
立ち止まって対応するだけの余裕はなかった。
さっきの声で、わかっちゃったから。
私の誕生日の夜、彼の携帯に連絡してきたのは――間違いなく、彼女だって。