Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「別に、私は構いませんよ。離婚しても」
「……え?」
完全に虚を突く展開だったのか、唖然として目を剥く彼。
そんな意外な表情も可愛いと思ってしまう私は相当末期かも。
「お互い、その方がいいんじゃないですか? 高橋さんのことは抱けるんでしょう? あの夜、帰ってきませんでしたもんね。きっと遅くまで楽しんで……」
話せば話すほど惨めになって、思い出してしまうのはラブラブな知依ちゃんと香坂さん。
舌を絡ませ、淫らな息を弾ませる2人。
脳内ではそれがクロードさんと高橋さんの姿に変わっていて、嫉妬のあまり眩暈がした。
どうして最初に私と結婚したんだろう?
不倫するくらいなら、私なんか選ばなければよかったのに……
「茉莉花」
いつの間にか距離を詰めていた彼の手が、そっと頬に触れる。
そうして初めて、私は自分が泣いていることに気づいた。
「っき、気にしないでください。私は、大丈夫、なので! やっぱり相性ってありますもんね。ソノ気になれない相手と無理やり一緒にいても、辛いだけですし。お互いのための前向きな離婚、っていうのもありだと思います」
腕を突っ張って彼を遠ざけようとするが、両手首をまとめて大きな手に握り込まれてしまい身動きできなくなった。
「え、ちょ、っ?」
「この涙は、嫉妬か?」
「そ、そりゃ、自分の好きな人が他の女性と仲良くしてたらっ……嫉妬して当然でしょう? 私とはシ、シてくれないのにっ……」
混乱したまま涙声で口にしてしまってから、猛烈な羞恥心が襲ってくる。
こんな風にみっともなく愚痴るつもりじゃなかったのに。
「あの、すみません。全部忘れて下さいっ私もう寝っ……」
顔を真っ赤に火照らせた私は、その場から逃げ出そうと立ち上がりかけた――のに。
「っきゃあ!」
掴まれた手首をぐんっと引っ張られ、私の身体はソファへ沈む。
すかさずそこへ、逞しい体躯がのしかかってきた。
顔の両側には彼の腕。
まるで檻のように囲われ、鼓動がバクンと打った。
「もう一度言ってくれ」