Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

知りたいかと聞かれたら、よくわからない。
どう考えてもハッピーな話にはなりそうにないし。

ただ15年前の事件につながることなら、私の意志に関係なく、知らなくちゃいけない。
それがたとえ、どんなに辛くて残酷な事実でも。

自分を鼓舞するように頷くと、おぼつかない足に力を入れてなんとか立ち上がり車の助手席側へと足を向ける。


「ん? これって茉莉ちゃんの?」

ふと、学くんの声が追いかけてきた。
振り向くと、彼の指が私の栞をつまんでいる。

「あ、うん。そう! ありがとう」

さっきスマホを落とした時に落ちたんだろう。
気づいてもらってよかった。大事なお守りだもんね。

ホッとして手を出す私へ栞を渡してくれながら、学くんが興味深そうに言う。

「これって手作りだよね? 綺麗にできてる。なんていう名前の花?」

「……え?」

ぽかんて口が開いちゃった。

なんていう名前、って、ジャスミンじゃない。学くんがくれた花だよ?

「えぇと……」

返事に困って言い淀む。
学くんは至って真面目な顔をしてるし、冗談って雰囲気でもない。

忘れちゃったのかな。
15年も前のことだし?

「なんだったっけな。忘れちゃった」

受け取りながらさらりと言うと、「そう?」ってそれ以上深追いはしてこなかった。
本当に忘れちゃったみたい。

一抹の寂しさを感じつつも、今はそれどころじゃないと顔を引き締める。

そして私は、学くんが開けてくれたドアから、助手席へ乗り込んだ。


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