Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
きっと有名なお店なんだろう。
凝った素材と見た目で、インスタ映えしそうな料理ばかり。
女性客が多いわけだ。
ただ、正直に言えば味についてはあまりよくわからなかった。
ともすればクロードさんと誕生日にいただいた創作和食と比べて、あの時のことを思い返しちゃったり。
平気を装っていても実は全然余裕ないってことだろうな、と自己分析。学くんには本当に申し訳ないけど……
早く一人になりたい自分と、早く肝心なことを聞かなきゃと焦る自分。
2人の自分に急き立てられるように機械的にナイフとフォークを動かし、もっぱら聞き役に徹して会話を繋ぐ。
そしてようやく、デセールまでたどり着いた頃だった。
「――で、何があったの?」
話の続き、みたいな口ぶりで出し抜けに聞かれ、クレームブリュレの器にカチャンッとスプーンがぶつかった。
「さっきからずっと上の空だよね。ご主人と喧嘩でもした?」
「えっ」
思わず声がポロリ。
しまったと思う間もなく、「当たりか」と彼は苦く笑い、ちょっと残念そうにスプーンを置いた。
うぅ、さすが学くん、鋭い。
言い当てられた気まずさに、たまらず目が泳いでしまった。
「僕でよかったら話聞くよ? 何があったか話してみない?」
相変わらず、王子は優しい。
うん。ちょうどいいかも。
こっちもクロードさんのこと聞きたかったし。
渡りに船の展開だ、と思うことにして居住まいを正し、視線を上げた。