Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
ドッドッドッ……
不穏が不安を呼び、とぐろを巻くように心臓を締め付けているみたい。
クロードさんは一体何を隠してるの?
私は彼を、どこまで信じていいの?
「………」
答えの出ない問いを繰り返して、呆然としながらテーブルの端へしがみつく。
そんな私の様子を心配したのか学くんは席を立つとやってきて、「茉莉ちゃん大丈夫?」と覗き込んだ。
「各務と2人きりで話し合うのが不安なら、僕も立ち会おうか?」
「えっ? ううん、そこまでしてもらうわけには……」
「遠慮しないで頼って欲しいな。僕は茉莉ちゃんの味方だよ?」
労わるような声音で言って、学くんの手が私の手に重なる――
「っ……!」
無意識、だった。彼の体温を感じるや否や、気づけばさっと自分の手をそこから抜いていた。
ショックを受けたように目を瞠る相手を見てようやく、自分が何をしたか気づいて後悔に襲われる。
「ごごめんなさいっ」
やだ。
今の、かなり失礼な態度だったよね?
どうしたのよ、私。
入院中に何度も励ましてくれた、あの手だよ?
退院後も苦しい時辛い時、いつだって思い出して、支えられてきたあの手。
あの学くんの手を拒絶するなんて。
「あのっ私ちょっとお手洗い、行ってくるね」
カバンを掴むと、返事も聞かずにそそくさと立ち上がる。
本当にちょっと、いろいろありすぎてどうかしてるんだ。
少し落ち着こう。
もの言いたげに追ってくる眼差しには気づいたものの、返す余裕なんかない。
私はそのままテーブルから足早に離れた。